※この記事を読むのに必要な時間:ちょっとコンビニ行って来れるレベル
さっと表面だけ読まれると誤解されそうな話でもあるので、長文読む暇のない方は読まないでもらったほうがいい記事です。読みやすくも書きません、って言うといつもの文章も長くて読みづれぇよという指摘にびくびくしている小西です。
7/25に発売します「実践 インハウス・リスティング広告 」が、副題が結構あぁだこうだと決まらなかったんですね。テーマがテーマなので普通に書くとどうも「インハウスが良いよ!」とか「インハウスで大成功!」とかといったメッセージに受け取られかねない感じになってしまうなと。インハウスの良さはあるわけですが頭ごなしにインハウスが良いよということを言いたいというわけではないと著者陣一同思っているわけでして、かと言って「インハウスで良かったり悪かったり」なんていう副題にしても、結局どっちだよ!っていうなんとも歯切れの悪い副題になってしまうわけです。
そんなこんなで議論の結果、
〜「丸投げ体質」から脱却するSEM成功の新条件」〜
というものになりまして、これはこれで、え、インハウスだったらそりゃ丸投げじゃないじゃんっていうか投げる先ないじゃん、って思われるかも知れない副題なのですが、中身を読んでいただければあら納得、というなかなかにこの本のことを言い当てている良い副題になったかなと思っています。
と、もう一つ、「丸投げはダメですよ!」というメッセージにも受け取られるだろうなぁとも思ってまして、とはいえこれも含め書籍的には主張したいメッセージとして何も間違ってないのですが、個人的には、「丸投げはダメだよね」っていう意見を耳にするとちょっといろいろと思うところはあって、そのことについて書きます。
異論は受け付けます。
外注とは?丸投げとは?
そもそも「丸投げはダメだよね」なんていう意見は、例えば社内で運用出来るように主に研修・教育を依頼する内容だったり、どうしても社内と外部業者と協働でないとこなせない内容だったりしたらそもそも丸投げでは成り立たないから出ないわけで、(良くも悪くも)社内で何もしなくても外部業者だけが頑張れば進められるような内容の場合、というわけですね。また、丸投げの定義によっても話はいろいろ変わるわけですが、僕としては、発注者が、外注先に対して必要事項を伝える、質問に答える、相談する、という軽い頻度の打ち合わせや連絡だけで済む程度までがぎりぎり丸投げ(悪い意味ではない)の範囲内であって、戦略立案や具体的なキーワード、広告文を考えるなど、作業を伴う時間がそれなりの頻度で発生してくると、丸投げではない、ということになるかと思っています。
つまり、リスティング広告に関して発注者が時間を多く使うようになると丸投げではない状態かなと思うわけですが、これがいいことなのか、悪いことなのか、もちろん一概には言えないのですが、こうなってくると個人的には、それってどうなのかなぁと思うことがあるのです。
最もパフォーマンスが発揮される発注の仕方は?
基本的にはしないのですが、僕もパートナーに依頼した案件が少しだけありました。これまで外注した方の中で、圧倒的に良いパフォーマンスを発揮してもらえたのが、丸投げで済んだ案件です。もちろん要所要所はチェックを入れて、問題ないかどうかは見るのですが、前述したとおり軽い頻度の打ち合わせと連絡だけで済み、打ち合わせなど早い段階で不要になります。こちらは全く何もしないので全然時間が取られず、かかるのは費用だけです。反対に、かなりの頻度でチェックをしたり、こちらも作業をしたりしなければいけなくなるような外注に関しては、当たり前ですが時間もリソースも取られます。この場合はリソースがないから外部に依頼するという目的でしたので、時間が取られてしまうというのは本末転倒ですね。外注する意味ないじゃんとさえ思えてくるのです。最悪なのは、「ちょっと手間かけさせちゃったので費用少なめでいいですわすみません…」と自ら値下げしてくる業者さんですね、逆に、金払うからちゃんとやってくれよ、大事なのはお金じゃなくて時間なんだけど、と思うのです。
また、広告と関係ないですが、僕が外注している業務で最大最高のパフォーマンスを発揮してもらえているのが、税理士さんです。税務関係は僕何もしてません。本気の丸投げ、ぶん投げです(社長としてそれどうなのかという意見は受け付ける)。それでもうちの税理士さんは、僕が注意しなければいけないこと、いつまでに何をしなければいけないかを、全て先回りして伝えてくれます。手間がかかる作業をやらされたこともありませんし、考えることに時間を使ったこともありません。考えないのでいろいろ抜けてて注意されます、すみません…。
ただ、だからこそ僕は税金大丈夫かなぁとか、決算がいつだからいつまでに何しとかないといけないんだっけ?とかいうことを一切気にせず、通常業務に没頭出来るわけです。没頭出来たからこそ今の会社の業績と自分のスキルとSEMカフェやLICなどで活動出来る時間があるわけで、これこそが丸投げで得られる一番のメリットです。丸投げして楽するってのは問題外で、丸投げすることによって出来る時間でさらに上にいけるというのが、丸投げの素晴らしさです。
理想の発注形態は
そんなこんなから、ぶっちゃけ丸投げは、一つの理想の最終形だと思っています。
ただしこれは簡単なことではありません。
現実的には、関係者全員悪いことをしないということが前提ですし(だから理想)、丸投げ体制に入るにもある程度の時間が必要です(だから最終形)。
発注者側として必要な努力、姿勢
まず、発注者は信頼出来る外注先を見つけなければいけません。信頼が出来なければ丸投げなど出来るはずがありません。
一度買って終わりの商品ではないので、本当の信頼は一度の打ち合わせでは発生不可能で、一つ一つの業務がきちんとこなされていくか、気になること全てに対して納得のいく説明がなされるか、結果が出ているか、出ていないなら納得のいく説明がなされるか、そして長期に渡って言っていることの辻褄が合っているか、などとにかく時間がかかります。もしくは、スキルや知識があればあるほど見極めるスピードは早くなるでしょうが、それでも、中長期に渡ってきちんと怠けずに業務をこなすかを見るにはやはり時間が必要です(そもそもスキルと知識があればいろいろ良いように進められるという側面もあります)。
このように、丸投げ体制に入るには発注者側としても努力が必要です。
なお、何の苦労もなしに丸投げ出来てしまった、信頼出来てしまっているということもありますが、それは大変貴重なことです。たまたま奇跡的にいい外注先が見つかったというだけです。常にいい外注先が見つかるわけではないですし中には悪い人もいるので、今の関係が特別なものなんだということを自覚しておかないと、違う業者さんとの取引において失敗することにもなるでしょう。
そして、信頼したら完全に任せることです。もちろん発注者ですから何か気になることが出たらまた聞いてもよいわけで、外注先はきちんと応える義務があります。ただしそれで納得したら、それ以上不必要に質問責めにして余計な手間をかけさせないことです。本来の業務に割く時間を外注先から奪うのは、結果にも影響してお互いにとってよくありません。
受注者として必要な努力、姿勢
受注者側も努力が必要で、はじめのうちは、発注者が納得いくまでとことん話し合う機会がそれなりに必要でしょう。また、要所要所できちんと業務を遂行していることを伝える必要もあるでしょう。これは自分がきちんとこなしているということをアピールするためではなく、発注先に安心してもらうためである、と考えて行うべきです。丸投げしたい人は、外注先がどれだけ頑張っているかどうかなんてどうでもよく、ただ問題なくきちんと結果が出ていればいいはずです。もし、頑張っているかどうかだけが気になる人が依頼主なのであれば、それはいい丸投げ体制にはならないのでまた別の話です。
また、何より大事なのはやはり結果を出すことでしょう。これに勝る信頼はありません。普段丸投げしてもらって、業務に対して最大限時間と自分のノウハウを注ぎ込める環境を与えてくれていること、これがどういうことなのか十分に理解して、本気で取り組み、結果を出すことです。
これこそが、丸投げの最大の醍醐味、丸投げが理想である所以だと思います。
受注者としてのNG行為
「何か気になることがあったら言ってください」をしょっちゅう言う人をたまにみかけます。相手のことを気にかけようとするからこそ出てくるセリフでしょうし、これ自体は悪いセリフではないのですが、気にさせた時点で負けなんですよね。いや少しくらい気になることはどうしても発生しますが、このセリフは、気にしたことを放置したらそれはあなたのせい、と発注者に責任転嫁するような危険なセリフです。何かあったら言ってくれるなんて、そんな楽なことないですよ。ちょっと新しいアイディアが思いついたとか、購入者に聞いたらこんな意見があったとか、っていう連絡をもらうのはむしろいいと思うのですよ。それをリスティング広告に反映出来ます。でもそれも、気にしなくてもいいことを気にして時間が取られてたら出来ないことです。リスティング広告以外にやるべきことなんてたくさんあるんですから、そちらに時間を使ってもらうためにも余計なことを気にさせるべきではありません。
受注者としては、発注者が何か気にしなくていいことを気にしてしまう、ということを最大限に抑えるべきです。「今月、自分は何もしなかった。でも結果出た!」と発注者に思わせるべきです。
何か右往左往させてしまったら、受注者の時間を取ってしまった、と申し訳ない気持ちになるべきです。
そのためには何を言うべきか?と考えたら「何か気になることがあったら言ってください」というセリフが出ることはそうそうないはずです。
それで結局丸投げが良いのか悪いのかというと
丸投げは、発注者も取られる時間と手間が最小限になり、受注者も取るべきコミュニケーションの量も少なくなり最大限に業務に時間とノウハウを注げるという、とっても理想的な形です。
ただ、それはあくまで理想、現実的にはリスクもかなり大きいし理想形になるには時間や信頼など簡単には構築出来ない環境が必要ですよ、ということです。
また、もちろん、発注者と受注者が一緒になって議論して、とっても良い形になっているケースもありますし、これはこれで、外注業者だけが頑張って出来るわけではない結果が出ることがあります。
ということで丸投げが良いか悪いかなんて、
そんなん場合によるわ
(どんがらがっしゃーん)
ていう感じで締りのない感じで終わりたいと思うのですが、こんなことを書いたのは、一応、本を書いたものとして、世に出してしまったメッセージに少しでも責任を持ちたいからです。
「インハウスって手もあるよね」「丸投げダメだよね」っていうメッセージ、これはこれで別に嘘ではないのですが(ちなみにインハウスが絶対良いとは言っていない)、
発注者「丸投げせずに自分もがんばります」
→不必要に右往左往してしまう
受注者「何でも言ってください、一緒に頑張りましょう!」
→楽する、責任を曖昧にする
というリスクもあり、そんなことが広まってしまうのを少しでも抑えたいなと思うのです。
書籍では、インハウスを完全内製化のみとは捉えず、外注先と協働で遂行するなど複数のタイプをインハウスと定義しています。このように広い意味でのインハウス化は今後避けられない流れだと思います。特に、戦略部分にさらに関与する広告主はとっても増えるでしょう。
そんな中、理想的な丸投げ体制も作れないようじゃむしろ協働体制だって上手くやれないぞというのが、今後伝えたい&肝に銘じたいことだなとこの記事書いてて思ったことですがこれについても書くとさらに長くなるな、あ、ここまで読む人自体少ないから心配ないか、でも疲れたからまたにするとして、とりあえず本買ってください。
インプレスジャパン
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